つむぐ、Colorbathとは(渡辺直樹)
「つむぐ、Colorbath」は、2020年10月から約半年間かけてお届けした全10回の連載企画です。Colorbarthの創業期からフルタイムメンバーとして活動している吉川雄介さん・椎木睦美さんに対して、ライターの十文字樹さんがインタビューを行い、記事を書くという企画でした。そして記事の編集と、今回のトークライブを企画したのが、私、コミュニティデザイナーの渡辺です。
私は2020年8月から2021年の3月にかけて、Colorbathのパートナーとしてファシリテーターや情報発信などを担当してきました。私が関わり始めた当時のColorbathは、様々な外部関係者やインターンシップ参加者がいましたが、実質としては”吉川さんと椎木さんの”会社でした。
2人の密な関係性により小回りの効く組織運営がなされていましたが、反面、お互いへの”慣れ”が生み出す抽象度の高い(第三者には伝わりづらい言葉で話す)コミュニケーションにより、本人たちすらもColorbathに関する自己認識が曖昧な状態となっていました。その結果として起きていたのは、第三者にもColorbathの価値観や活動内容が伝わらない、ということです。
そこで、元々は社内ブログのような位置づけで検討されていた今回の企画を活用することにしました。
第三者のライター(十文字さん)による2人へのインタビューと執筆により文字化された価値観や活動内容を、まずは2人が読み返し、さらにそれを対外的に発信して様々な人たちに読んでもらいます。
その過程を通じて、2人が暗黙のうちに築き上げてきたColorbathに対する考えを可視化し、そこに第三者もアクセスすることができる状態を目指しました。
社内の自己満足なブログではなく対外的に発信することを前提とすることで、当然ながら、吉川さんと椎木さんは十文字さんが執筆した記事を添削しなければなりません。そうして文章を細かく読み込むことになり、その作業自体が自分たちの考えと向き合う機会にもなると考えました。
そうして紡がれた全10回の記事。これを題材として、「結局、Colorbathとは何だったのか」と振り返ったのが今回のトークライブです。ライブでは当事者の3人に加えて、Colorbathとの縁が深い後藤智さん(立命館大学准教授)もお招きしました。彼の専門であるデザイン思考による経営学という視点からアドバイスをいただきながら、私がファシリテーターとして進行しました。
「つむぐ、Colorbath」はこれまでのColorbathの思考の軌跡であり、アーカイヴでもあります。このアーカイヴをもとにColorbathが今後どのように進んでいくのか。それはトークライブの振り返りとして以下に記された3人の文章から読み取ることができるかもしれません。
それでは、トークライブで話された要点を知っていただくという意味でも、3人の文章をご笑覧いただければと思います。
Colorbath:椎木睦美
今回の「つむぐ」連載を振り返る対談は、私にとってColorbathで働いてきた2年間の出来事だけでなく、自分のこれまでの人生観や積み上げてきた価値観までもを見直すような、そんな時間になったと感じる。
Colorbathという団体や、私自身の仕事についてを他人に説明するとき、いつも「何をやっているのかよくわからない」「わかりずらい」と言われ続けてきた。もしくは、そう言われないように、わかりやすい活動だけを紹介する(例えば、海外と日本の生徒同士をオンライン交流させる仕事をしています。みたいに)、伝えるようにしている自分がいた。
でも、わかりやすい言葉を並べて説明すればするほど、「理解されて、共感されて安心する自分」と「自分の進むべき道が固定化されすぎる窮屈さを感じる自分」の2人の自分がいることに気づいていた。
それは、インタビューされた後に記事化された文章を見たときにも感じていたこと。十文字くんや渡辺さんの編集によって、誰にとってもわかりやすく、シャープな表現になることによって、どこかしっくりこない自分が出てくるのも事実だった。
そう感じていたことをこの対談で改めて共有したことから、「わかりづらさ」から生まれる「思考」と「態度」の関係性について話が深ぼられたことは、とても印象的だった。それは、「わかりづらい」ことに対する自分自身のモヤモヤを払拭するために、「わかりやすさ」を求めて「決める」ということをしようとしていた自分に気づいたからだ。
そして、その行為が、ときに「一番大事にしたいColorbathの本質」を無意識的に失ってしまう可能性があることに私は気づいていなかった。
「決める」のではなく「決まる」ものが組織の境界線であり、みんなで大切にしていきたい「本質」「根幹」なんだな〜と。過去を振り返ったときに、何が変化していないか。逆に変化していることはなにか。
そんな、過去や現在の出来事を行き来しながら、その時の思考を振り返り、周りの仲間と共有し続けることが、「未来」に向かって歩むということなんだな〜と学ぶことができた。 Colorbath自体が、「目の前の人次第で方法が変わるワークショップ的経営」である、ということを知って、今後はより「デザイン」を軸に経営や人材育成、マネジメント分野の知識を増やしていきたいと思っている。
自分自身をそうやってアップデートさせ続けながら、DOTSだったり、インターンの育成だったり…その知識を少しずつ事業や組織運営に役立てていければなと感じています。
また、1年後には、この「つむぐ」をオンラインだけでなく合宿形式でぜひ開催したい!!そのときには他のメンバーにも参加してもらい、対談だけでなくワークショップや勉強会などもできると楽しそうだな〜と想いを巡らせてます!!
ライター:十文字樹
私はColorbathをフェンスの外から見つめるファンとして配信と半年間を振り返りたいと思います。
今回のインタビュー記事の作成は、吉川さんが「活字のパワーで過去とのつながりが見えてきた」とおっしゃったように、Colorbathの根本にある価値観がどこにあるのかを文字化することを目的にインタビューしてきました。
それが吉川さん・椎木さんの新しい発見につながったのなら、このプロジェクトは成功だと思います。うれしいです。
そして、結局Colorbathって何だったんだろうと思うと、いまいちしっくりとした答えはありません。
そのなかで、後藤先生の例示は一つのヒントであるように思います。
イギリスでは地域の人が地域のために活動した結果、会社になったビール会社がある。
このカテゴリーにColorbathも位置付けられると思います。吉川さんのネパールへの思い、椎木さんのマラウイ、山口県への思い。この「想いをカタチに」の「想い」は吉川さん・椎木さんの想いであると同時に、現地の人たちの想いです。この想いの重なりがColorbathの全体であり原動力だと感じました。
だからこそ大きくする必要はない。想いをカタチにするには、数よりも一人一人の想いであり、個性なんだと思いました。
そして渡辺さんがおっしゃったように、その想いは共同作業でこそ見えてくるものなのかもしれない。実際に、私は記事にするという作業によって見えてきたColorbathがありました。それを文字化したわけですがうまく言葉にできたでしょうか。そういった意味では、今回の記事化は野暮だったかもしれませんね(笑)。想いは実際に体験するに限ると思います。
もちろん、共同作業を通じて「違い」を感じることもありますし、それで団体から離れることもあると思います。今後の社会はそれで良いのかもしれません。
一つ、「それで良い」が行き過ぎると想いの主体が見えなくなることがあるのではないか。現地の想いなのか、私の想いなのか、メンバーの想いなのか。そこにズレはないのか。
それを回避するためにも、後藤先生がおっしゃったような「ロジック」とのバランスが必要だと思います。想いは共同作業を通じて理解できることが大きいです。同時に、言葉のサポートが推進力を与えるとライターの僕は思います。
「デザイン先行」そして「ロジックの後付け」。今のColorbathはまさにこの「ロジックの後付け」を必要としているんじゃないか。インタビューを通して感じました。
このロジックの後付けのためには、後藤先生がおっしゃるようにより広く深く学ぶことが必要だと改めて思いました。「楽しい」という形容詞も、「○○が」という主語が入ることで楽しさのモトが目に見えますし、「○○のように」という修飾語を付けることで伝わる人が増えます。
「想いのために、想いを持つ人が活動をする」というのが核であるからこそColorbathはパワフルでユニークな活動ができています。そしてその想いを鋭く深く沁みこませるためには共同作業と言葉が強い味方になるだろうと思います。
言語化を恐れず、それでいて多すぎず、受け手を信じることが「計画的ほったらかし」だと僕は解釈しました。ライターとして、言葉を信じて「言葉を計画的にほったらかしする勇気」を学ばせていただきました。今後のColorbathの「計画的ほったらかし」を楽しみにしたいと思います。(笑)
今後のColorbathはどう舵取りするのでしょうか。私はフェンスの外から見つめる、タオルを首からかけたファンの一人に戻ります。しかし、もしかするとまたフェンスのなかに戻ってバットを握ることもあるかもしれません。
組織の境界は今決めるのではなく、後で振り返った時に決まるものらしいので。
常に変わり続けるColorbathはこれからも謎の組織なのでしょう。そしていつか振り返った時に、「この時期は○○の団体」とわかるものなのかもしれません。その時にいつもの熱量たっぷりの言葉を楽しみにしたいと思います。 長い間お付き合いいただきありがとうございました。
Colorbath:吉川雄介
Colorbathのこれまで、これからを様々な視点から見つめ捉え、やりとりをしたこのトークライブが自分にとってたまらないくらい学びと気づきと刺激に溢れていたので、その余韻に浸りつつ、振り返りをしたいなと思います。
まずは、このこみあげてくる感謝の気持ち。
今回のトークライブは、「つむぐ、Colorbath」という連載企画(全10回)を元にして、それを振り返りながら行ったものです。
10時間以上に及ぶインタビューと記事執筆に取り組んでくれた十文字くん、そして編集とディレクションをしてくれた渡辺さん、本当にこの機会をありがとうございます。
十文字くんは、自分が立命館大学で講演をしていて、そこで聞いていた十文字くんがその後質問に来て、もっと知りたいと連絡をもらったことがきっかけ。そこから、Colorbathのことを知り、インタビューを記事にして、より多くの人がColorbathのことを知る機会を作ってくれました。本当にありがとう。
このトークライブを振り返って、たくさん書きたいことはあるのですが、ここでは全てを語り尽くせないので、特に印象的だったことを3つ書きたいと思います。
「インクルージョンとユニークネス」
カタカナ表記であれですが、、、ダイバーシティと言われるようになり、それが最近ではインクルージョンへ。みんなを受け入れ包み込むようなイメージでしょうか。意見もアイデアもそれぞれで、それぞれ全てが等しく尊重されるようなときに、「キラリ光る個性」「独創的なユニークさ」「その他大勢と異なる意見」といったユニークさはどのように育まれるのか、尊重されるのか。
同調圧力が強いと感じるこの世界で、ユニークネスを認めたり伸ばしたりするためには、どういったことが必要になるのか。自分にとって今後のテーマになりそう。
「感性に基づいて、クリエイティブに実行」
数字やデータに基づいてロジカルに実行、との対比。ロジカルシンキングは、データ量が多くなってくればコンピュータの方が得意になっていくし、ロジカルに考えると結論が似通ってくる。ユニークさは失われるのではないか。ロジカルさが不要なわけではなく、もちろんバランス。ロジカルだけでしか判断できない人は、それはそれで世界が狭くなる。自分の感性に基づいてクリエイティブに実行して、それをロジカルに後付けする力が大切。
「思考の積み重ねによって、態度になる」
“思考”は、「これを考えよう」と思って頭を使っているときのもの。一方で態度は、考えようとする前に無意識的に頭が働いている状態。態度は、スタンスであり、ベクトル。そして、意識的な思考を繰り返し繰り返し行うことで、それが定着して“態度”になる。
ということは、やっぱり意識して“思考”の質を高めることが必要で、そのための場数も必要。その積み重ねが態度になる。この態度を身に着けている人とそうでない人とでは、スピードが変わってくる。
「過去を振り返ったときに、決まる。わかる。」
夢を描いて、目標を設定して、ビジョンを設定して、そこから逆算して実行していく。そういう「未来を考えてからロジカルに」ということが強く認識されている。もちろんそれも大事。ここでも、きっとバランス。未来を定めにくいときには、定まっていなくても前に進めるか、一歩踏み出せるか。「これがやりたい!」という夢がなくても、日々の努力を積み上げることができるか。未来に偏りすぎないこと。「今」の積み重ねを通して、一歩一歩前に進んでいくことを通して、あとで振り返ったときにそこに道ができている。あとで振り返ったときに、「自分ってきっと、こうなんだ」とわかる。それも大切。Colorbathの「ミチづくり」という名前には、そういう意図も込めている。つながった。
「わかりやすさを求め過ぎた先には?」
相手にわかりやすい説明をすることは大切。質問をされたら、相手がイメージができて納得できる回答を求められるし、そうしたい。でも、わかりやすさが目的化してしまったり、「人がわかるかどうか」だけど軸にしてしまうと、その途端に世界は狭くなり、他人に人生を生きることになる。説明するときには、相手にわかりやすいように伝えるのは大切だけど、自分がどう生きるかについて、自分でも全てがわかるわけでもないし、ましてや相手に全てわかるはずもない。それでいい。わかりやすさを、求めすぎない。
「ワークショップ的経営」
この言葉は印象的で、今後はよりテーマになっていきそう。ビジョン、ミッションを定めその奴隷になったり、ロジカルに戦略と計画を設定し粛々と実行したり。もちろんこの良さも大切だし、丁寧に進めていきたい。
でもときに、ワークショップのように、準備や計画を丁寧にするものの、本番では現場のリアルを大切にして、勇気を持って手放し、その場その瞬間を大切にすること、これも大事にしていきたい。プロジェクトを行う中で、いろんな人に出会うし、いろんな気付きや学び、変化や課題が表れる。計画も大切にするけど、その場の出逢いや意見も大切にする。そんなことを思わせてくれた。
「自由を繰り返すことで、自由の不安がなくなる」
日本という色々ときれいに整った環境下では、ある程度の制限がある。その制限があるから、その中で工夫したり努力したり競争したりして頑張れる。
急に自由になると、「何でもしていいよ」と言われたら不安になったりして、逆に何もできなくなったりする。「この白紙の紙にどんな絵を書いてもいいですよ」と言われたり、「ワークショップの自己紹介で、何を話してもいいです自由です」と言われたり。それよりも、お題やテーマが決まっていたほうが安心したりする。
だからみんな自由が居心地が悪くて避けたがる。でも、そんな自由を繰り返し体験していくことで、自由でいることの不安がなくなる。フリーランスとか起業家とかもそうかもしれない。自由でいる、体験する前には不安がある。体験せずして、不安じゃなくなることはない。体験、体験、積み重ね。
「白紙のテストは、え?となる」
やりとりの中でも、Colorbathは決まっていることもあれば、決まっていないこともあって、「え?」って心配になることがあるらしい。新発見。これも「自由と不安」に似たような話で、期末テストの問題用紙をめくったら白紙で、「学んだことを自由に記述しなさい」みたいな感じの問いが急に出題されると、「え?!」ってなる感じ。もともとそういうテストだと知っていたら対策ができるし問題はない。けど、「それまでの常識や当たり前」と違うことが急に出てくると、「え?」となる。
そういう意味では、事前に、白紙のテストもありえるよ、なぜなら〜、と説明をしておくことは大切かも。
ということで、3つどころか、8つの言葉について振り返りながら書いてしまっておりました。自分の頭の中にも残っている言葉だし、これからのColorbathのプロジェクトをやっていく上でキーワードになりそうなものでした。それぞれの考え方について言葉として自分自身も認識することができました。
そうすることで、きっとこれらのことを今後より一層考えていくことになるんだと思います。みたいと思っていることをみる、まさにColorbath効果ですね。
半年に一回くらい、この「つむぐ、Colorbath」的な振り返りはやりたいなと、そう思いました。いやー楽しかった。またぜひ、よろしくお願いします。