つむぐ、Colorbath#9 Colorbathのこれから −吉川・椎木のまなざし(前編)

こんにちは、ライターの十文字 樹(じゅうもんじ たつき)です。

「Colorbathっていったい何をしている団体なのか?」
「何のために活動しているのか?」

そんな、私自身の疑問から始まったインタビュー企画「つむぐ、Colorbath」。

今回は、吉川さん、椎木さんのお二人がお互いのことをどのように認識しているのか、Colorbathのこれからについてどう考えているのか。

私も含めた3人で語らう形で、今回を前編、次回を後編としてお届けまします。

「コトづくり・ヒトづくり」について

十文字:今日はお二人それぞれの考えについて、会話を通してお聞き出来たらと思います。はじめに、Colorbathのプロジェクトにおける「コトづくり・ヒトづくり」についてお聞きします。これまでのインタビューを通して「椎木さんのヒトづくり=教育に関する問題」「吉川さんのコトづくり=生活に関する問題」という認識をしました。これに間違いはないですか?

椎木:大枠は合っていると思います。ヒトづくりは教育が学校だけではないことを大事にしていきたいと思っています。教育というと学校が連想されがちですが、人が学ぶ場は他にもたくさんあります。

吉川:そうですね。合っていると思います。コトづくりの活動目的としては「関わる人たちの想いを形にするための雇用・事業をつくって、未来をつむぐ」ですね。あと、何らかの課題を解決していくので、生活に関する“問題”は間違いではないですが、もう少しやわらかいニュアンスで、生活に関する“領域”くらいでもいいのかもしれないです。

Colorbathの事業領域

十文字:コトづくりではおもに、ネパールとマラウイがフィールドになっていますね。

吉川:そうですね。まず僕がネパールの人たちとソーシャルビジネスを立ち上げてきたという経緯があり、そこに椎木さんの繋がりがあるマラウイが加わって、この2カ国が主なフィールドとなっています。ちなみに、活動をし始めた頃には、ネパールという国を支援する、とかマラウイとか日本の課題を解決する、みたいに、国という括り方で活動を捉えていたような気がしています。社会の課題を解決するための活動にこそ価値がある、みたいに意気込んでいた感じです。そういった気持ちももちろんありますが、最近ではそんな括りにはとらわれずに、一人ひとりの“ひとの想い”に向き合い大切にしていこう、そんなふうに思えるように、最近なりました。

十文字:なぜそう思えるようになったのでしょう?

吉川:これまで10年くらい活動をしてきて、ふと、「なんのために、自分は頑張っているんだろう」と改めて振り返ったときに、途上国支援とか社会課題とか、そういう大きなことに突き動かされているというよりも、自分が応援したい人のために、自分のことを応援してくれた人のために活動したい、そういうことが原動力になっているのかなと、考えるようになりました。やっぱり、恩返しがしたいんだと思います。恩返しをするために活動して、その活動を通して、関わるひとの見える世界がひろがるといいなと思うようになりました。

椎木:私は昔から、自分が活動するモチベーションは「恩返しがしたいという想い」だったと思います。活動の中で人のことを考える時には、国境がどうとかは気にしていない自分がいました。地球上の人間の中で、私やColorbathとつながりのある人という感じです。

吉川:その通りです。僕の方が縛られていました!笑。最近になってようやくすっきりしてきました。

マラウイについてのフォーラムを運営したこともある

活動における関係性と役割分担

十文字:では、そのような活動においてお二人はどのように仕事を分担しているのでしょうか。

吉川:僕はプロジェクトの内容を対外的に説明することが多いです。そこで出会う人たちに協力を仰ぎつつ、課題と結びつけながら、プロジェクトとして形にするのが僕の役割だと思っています。椎木さんはプロジェクトの関係者が動きやすくなるように、関係性を築く役割を担ってくれていると思います。

十文字:なるほど。そういう意味でも、「吉川さん=コトづくり」「椎木さん=ヒトづくり」とわかれているのでしょうか。

吉川:そうですね、それぞれがヒトづくり・コトづくりの担当としての役割を担い、ある程度の決定権を持っています。とはいえ、もちろん僕がヒトづくりに関わることもありますし、椎木さんがコトづくりに関わることもあります。

山口県周南市の藤井市長に事業を説明した時の様子

十文字:例えば吉川さんはコトづくりの仕事しかしないといった、行動範囲を限定するということではないのですね。では、お二人はお互いの関係性をどう認識しているのでしょうか。

椎木:私は吉川さんのことを対等なパートナーとしてとらえています。なので、決定については考えながら意見しますが、お互いの意見に絶対性はありません。それぞれがプロジェクトに対して持っている情報量も違うので、決定できる範囲は変わってきますが、基本的にはフラットな関係だと思っています。

椎木:例えばインターンなど、いろんな関わり方があるColorbathですが、同志としてみんなを捉えています。椎木さんに限らずメンバー全員が対等で、お互いに敬意を払うことができる関係性でありたいと思っています。ただ、人によって得意・不得意があります。その点では、自然と、椎木さんと強みと弱みを補い合う関係になっています。

インターンの小川が主催した座談会「まちづくりにおけるまちの終活とは?」

十文字:一方で、これまでのお話を聞いているとお二人とも最前線に立つプレイヤーですよね。どちらかがサポーターを担う、といった分担はあるのでしょうか?

椎木:私がColorbathに入ったころは、吉川さんがプレイヤーで、私がサポーターのような立ちまわりでした。しかし今は私もプレイヤーとして動くようになりましたね。最近は役割について検討することも増え、ある程度の役割分担が見えてきました。でも「この人はこの役割」と厳格に定めているわけではありません。チームがフラットで互いのリスペクトがある結果、それぞれにフィットする役割を自然と見つけているのだと解釈しています。

吉川:新しいメンバーが加わることも、Colorbathとして前に進んでいくうえで必要です。人が増えれば役割や関係性も変わります。Colorbathというチームでは、関わる人が持つ強みを活かし合うために、自然とフィットしていければいいなと思っています。ちなみに、それぞれのプロジェクトベースで関わってくれる人たちもいて、すごくサポートしてもらっています。

「わかりづらさ」への向き合い方

十文字:お二人の言うように、役割などを厳格に決定しないのはColorbathの特徴だと思います。一方で、これまでのインタビューではお二人とも共通して、外から見るとわかりづらさがあると言っていました。この点についてどのようにお考えなのでしょうか。

椎木:確かにわかりづらさは弱みでもあり、改善すべき部分もあるとは考えています。でも、少し考え方を変えると、人と関係を築くことと同じではないか、とも思っています。人の特徴って、長い付き合いがないとわからないことがありますよね。Colorbathも同じで、わからないことから理解を深めていくことは、Colorbathを多面的にとらえることに繋がると思います。関わる人たちが時間をかけて深く理解してくださって、そのうえで関係を築くことができれば、自然と長く続く関係性になるんじゃないかと思います。みえる世界がひろがるのを体験できる場という意味ではColorbathらしいとも思います。

十文字:なるほど、わからないからこそ、理解しようという動きにつながると。

吉川:わかりにくさの背景の一つは、複数かつ異なる種類のプロジェクトが同時進行していることがあるかなと思います。プロジェクト間での関連性が見えづらいことや、プロジェクトごとに取り組んでいることや考えていることが異なっているように見えることがあるようで、「何を目指してやっているんだろう」みたいな疑問に抱かれることもあります。それがネガティブに作用し、関わる人たちのモチベーションを下げてしまうことにならないよう、伝えることへの努力を怠らないようにしたいとは思います。

複数かつ異なる種類のプロジェクトたち

椎木:ただしネガティブに作用しない疑問なら、問題ないですよね。自分なりの正解を見つけるためのポジティブな疑問なら、そこから深い理解に繋がるし、いいことだと思います。

ネパール、マラウイというフィールドについて

十文字:では活動のフィールドについてもお聞きしたいです。これまでのお話で吉川さんにはネパールとの関りが、椎木さんにはマラウイとの関りがあったことから、今のプロジェクトに繋がっているとお聞きしました。では、それぞれがColorbath以前に関わっていなかった、吉川さんにとってのマラウイ、椎木さんにとってのネパールは、どのような認識でしょうか。

吉川:マラウイは、メンバーである椎木さんの恩返しという意味合いもあるので、僕はそれに協力したいというスタンスです。人の想いを大事にしたいので、メンバーが大事にしている場であれば、そこに貢献できるよう活動しようと思います。僕にとっては、それがメンバーへの恩返しという意味もあるかもしれません。また、マラウイのことを調べたり、プロジェクトを通じていろんな人たちと出会ったりしたことで、活動自体の意義も実感するようになりました。

椎木:私も同じですね。その国のことを想う人がいるからこそです。ネパールに関していえば、私がもともとアジア地域に興味があり、マラウイに似た雰囲気があるように感じたことから、魅力や共通点を見出して関わるようになりました。ただ、Colorbathに関わった当初は「吉川さんのフィールド」という意識があったので、自分ごととしてネパールの活動に意味を見出すのには時間がかかってしまいました。

十文字:たしかに、あまり馴染みのない国を自分ごととして捉えることは難しいかも知れませんね。

椎木:ネパールを自分ごととしてとらえるきっかけは、2020年2月に初めてネパール・マラウイ・日本をつなげたDOTSでした。それまでも活動のフィールドとしては認識していましたが、ネパールとマラウイの子が話している光景に感動したことから、より深く自分ごととして捉えるようになり、「ここからだな」って思いました。

マラウイ・ネパール・日本をつなげたDOTS

吉川:2月のDOTSのはとても大事でしたよね。がんばってきてよかったなあ。ネパールへの関わり方やColorbathの運営は僕一人で進めることもできたかもしれないと思います。でもそうじゃなくて、椎木さんが僕とフラットでいようとしてくれたことが、Colorbathのあり方にも大きな意味が与えられたと思っています。一人でやるよりも時間はかかったかもしれませんが、Colorbathにとっては必要な時間でした。

椎木:そうですね。私も最初はそんなこと実現できるのかー?って難しさを感じていたけれど、実現出来て本当によかったです。ネパールへの関わり方の思いが変わったことでColorbathへの関わり方も変わりましたね。

次回に向けて

お二人へのインタビューを通して、現在のお二人の関係性やそれに至るまでの経緯、その根底にある共通の価値観が見えてきました。

お二人は対等なパートナーとして。お互いを補い合う関係にあると言います。

そしてそれぞれの恩返しからネパールとマラウイに関わるようになり、もともと関係がなかったフィールドに対しても活動を通して意義を見出すようになっていました。

そしてその末に、現在のColorbathの価値観・体制へと進展してきました。 次回インタビューでは、今回のインタビューで振り返ったこれまでの情報をもとに、これからの活動の方向性やそのスタンスについて聞いていきたいと思います。