つむぐ、Colorbath #04 一緒に未来をつくる ‐コトづくり事業にせまる‐

こんにちは、ライターの十文字 樹(じゅうもんじ たつき)です。

「Colorbathっていったい何をしている団体なのか?」
「何のために活動しているのか?」

そんな、私自身の疑問から始まったインタビュー企画「つむぐ、Colorbath」。

前回はColorbathの7つのプロジェクトのうち、WEB交流プロジェクト「DOTS」、「Colorbathカレッジ」「フィールドワークプロジェクト」については椎木さんを中心にお話を伺いました。

それでは残る4つのプロジェクトはどのようなものなのでしょうか。「コトづくり」事業は「ソーシャルビジネス」のようなプロジェクトであると吉川さんは言います。ひとつずつ具体的にきいていきます。

「コトづくり」プロジェクト

そもそもソーシャルビジネスとは、事業収益を上げることで、社会問題の解決を継続的に実施していくような事業のことを指します。

例えば貧困問題や環境問題の解決など様々な種類の目的を掲げている団体があります。

吉川さんは、コトづくり事業には大きく4つのプロジェクトがあると言います。

それではまず、アフリカのマラウイをフィールドに実施している「ソーラーボイラープロジェクト」からきいていきます。

ソーラーボイラー

吉川:

アフリカ南東部のマラウイをフィールドに、太陽光を活用して熱を生み出すソーラーボイラーという装置を活用し、現地の衛生環境・栄養状態の向上を目指すプロジェクトです。

マラウイでは、慢性的な電力不足があり、国民の90%以上が薪をエネルギー源にしています。

病院などの医療施設においても熱やお湯を安定的に確保することができず、医療器具の滅菌消毒やきれいな飲料水の確保が難しい状況です。

衛生環境が整っていないことから多くの住民が下痢になり、食べたものが吸収されず栄養失調の子どもが非常に多くなってしまっています。

そこで、太陽光を利用した手軽で地球に優しいソーラーボイラーを活用することで、医療道具の滅菌消毒やきれいな飲料水の確保を行います。

マラウイの病院とも連携して活動を行い、持続可能な事業モデルの実現を目指しています。

「太陽の力で、いのちと地球を守る」それが、このプロジェクトの目的です。

吉川さんは、マラウイの貧困を背景とした大きな問題の一つとして子どもの栄養失調があると考えました。

そこで、NPO法人ISAPHと協力をしながらソーラーボイラーをマラウイに届けることにしました。

Colorbathの椎木さんがJICA青年海外協力隊の隊員としてマラウイで2年間活動していた経験をもとに、現地の病院と日本のNPOや専門家の橋渡し役をColorbathは担っているそうです。

2019年9月にColorbathメンバーが現地に行き、マラウイでソーラーボイラーの稼働実験を行いました。

現在は、マラウイの人たちが自分たちの手で運用できるようソーラーボイラーの改良が進められています。

吉川さんは、持続性のある活動にするためにも現地の理解、積極性を育むことが重要であると強調しました。

特に、目には見えない衛生環境面の向上については、教育が必須です。

現地の保健省や教育機関とも連携をして、いかに衛生環境の向上がいのちを守ることにつながるのか、時間をかけて浸透させていく活動を行っていくそうです。

マラウイでの実験した時の映像

Himalayan Luxury Beans

続けて、「Himalayan Luxury Beans」(持続可能なコーヒープロジェクト)について尋ねます。

吉川:

「Himalayan Luxury Beans」では、ネパールのカブレ県をフィールドに、コーヒー苗の植え付けから収穫、ブランディング、販売までトータルでサポートをしています。

ネパール山岳部では断崖絶壁の道を何時間もジープで走らなければならず、地理的に厳しい環境下ゆえに地域に仕事や産業は多くありません。

生まれ育ったその地域でも家族と離れ離れにならずに生活ができ、村に誇りを持てるような仕事を創る、そんなことを目的に始めたのがこのコーヒープロジェクトです。

パールの農村地域は、ヒマラヤ山脈に代表されるように、標高が高く崖も多くあります。

そのため大規模な工場を建設する場所もなければ、作ったものを運搬することも難しく、産業がなかなか発展しないため、生活するためには海外へ出稼ぎに行くしかない状況だと吉川さんは言います。

そこで、農村部にどうしたら仕事を作り出すことができるのかを考え始め、野菜を作ってみたりや家畜支援などに取り組んだり、そんな試行錯誤の末に、標高が高くても育ち、鮮度も他の植物に比べて影響を受けにくいコーヒーを生産することにたどりつきました。

Colorbathでは、コーヒーを育てるノウハウをもつ日本の企業と連携し、ネパールにいる専門家の協力も仰ぎながら、現地の人たちが自分たちでコーヒーを生産する体制づくりを支援しています。

このプロジェクトにおいても、やはり現地の人たちが自らコーヒーの生産に関わるように意識づけすることが重要だったと吉川さんはおっしゃいます。

コーヒープロジェクトの目的を伝える映像

スマートレクチャーコレクション(スマコレ)

同じネパールをフィールドに実施している「スマコレ」はどのようなプロジェクトなのでしょうか。

吉川:

日本の英語教育とネパールの就労支援という二つの課題を同時にクリアしようとするのがこのプロジェクトです。

スマコレは、教科書会社の啓林館さんによるオンライン英語 動画・添削サービスです。

日本の高校生が英語の文章を書いて提出し、それを外国人講師がオンラインで添削してフィードバックをする、というサービスがスマコレで、Colorbathはネパールでの添削基盤の運営を担っています。

日本の高校生が英語を勉強すればするほど、ネパールで雇用が生まれるっていう仕組みになっているのがこのプロジェクトのポイントですね。

すでにスマコレでは、ネパールで20人雇用しており、売り上げも獲得できているそうです。

さらに、現地の人たちが積極的に実施していることから、運営の形も仕上がりつつあるプロジェクトだと吉川さんはおっしゃいました。

こういった考え方を応用すれば、地域や国にかかわらず異なる国々の問題を同時に解決する、ということがもっと実現されるのかもしれません。

今後の展開が楽しみなプロジェクトの一つだと言えるでしょう。

スマコレについて紹介した動画(マンスリーColorbath 2020年9月号)

留学生サポート

最後に「留学生サポート」プロジェクトについて尋ねました。

吉川:

日本で働くことを目指すネパールの方々は多くいますが、実際には日本で働くためにはたくさんの壁があります。

日本語はもちろん、学ぶためのお金も必要ですし、面接を受ける機会を見つけるのも簡単なことではありません。

これは日本人が学校を卒業して就職するまでと同じことですが、留学生となるとそれが大きな障壁になってしまいます。

少子化で日本を支える働き手が不足していく中、海外から日本に来て働く方々によって、日本は助けられていく社会になってきていると思います。

私たちは、ネパールで運営している学校で日本語や日本文化を教えるところから始まり、就職活動のガイダンス、面接のセッティング、来日後の生活のサポートまでトータルで行います。

ネパールの方々が日本語を学び、就職し活躍するまでを支援するのが、この「留学生サポート」プロジェクトです。

プロジェクトを始めてから約4年で20名以上の方々がサポートを経て日本で仕事をしているそうです。

生活の中での問題も解決できるように、就職後も継続的なサポートも実施しているとのことです。

ソーシャルビジネスの原点

おもにネパールを現場としながらも、アフリカのマラウイにも活動をひろげているColorbathのコトづくり。

「想いをカタチに」するためにも、社会を変えていく必要があると考えています。

そんなソーシャルビジネスを進める吉川さんに、その原点を聞きました。

Colorbath CEO 吉川雄介

吉川:

2014年に、ネパールの孤児院の子に仕事をと思い、日本で働けるようにしようと動いたことがあります。

日本の企業さんとも連携して、多くの時間とお金もかけました。

仕事内容や住む場所やお金や、本当にいろんなことを確認し整備したのですが、最終的には来日して働くビザが下りず、日本で働く夢が叶うことはありませんでした。

結局その子たちは他の国で出稼ぎに行って働くことになりました。

希望を与えたにも関わらず結局叶わず、ひとの人生を大きく変えてしまい、その責任を果たせなくて。

このことがきっかけで、それまで務めていた会社をやめて、しっかりこの領域にフルコミットすることに決めました。

Colorbathには現在7つのプロジェクトがありますが、その原点には一人の少年への援助と大きな挫折がありました。

それまでも吉川さんはWeb交流プロジェクトを会社での仕事と両立して実施していましたが、このことがきっかけでColorbathとして本格的に活動することに決めました。

世界をひろげるきっかけはもちろん、それを実現させるためにもColorbathはソーシャルビジネスもその活動の範疇に含めていたのでした。

吉川さんにとってのコトづくり事業

前回の椎木さんへのインタビューで「ヒトづくり」が「みえる世界をひろげる」ためのきっかけづくりの事業であり、今回の吉川さんへのインタビューでは、「想いをカタチに」するために「コトづくり」の事業があることが分かりました。

様々なプロジェクトの原点でもある挫折を経験し、Colorbathとして活動を始めた吉川さんにはこだわりがあるそうです。

吉川:

日本の学校で生徒さんたちに話をするとき、自分自身の経験が豊かなほうが、彼らに語れることが増えると思っています。

そして、社会の問題などについても、当事者として関わる経験があるからこそ、リアルに語れるものだとも考えています。

なので、評論家ではなく、常に実践者でありたいと思っています。

他人に「がんばれ」というなら、自分も頑張らなくちゃいけないと思うんです。

・・・ちなみに、Colorbathは支援団体なのでしょうか?

吉川:

支援「も」する団体ではありますが、支援「だけ」の団体ではないです。

「支援する」という考えでは、問題を見つけて、自分ができる範囲の中から支援できる方法を探す思考になってしまいがちかなと思います。

そうではなくて、Colorbathが現地の人を支援するのではなく、現地の人と一緒に未来をつくっている感じです。

活動を持続させるためにも、事業化にこだわっています。

ネパールのパートナーたち

吉川さんは現地の人たちと未来をつくる実践者である、というこだわりを話してくださいました。

問題の解決はもちろん、そこから先の未来まで見据えたプロジェクトとして動かしたいからこその事業化、ということでした。

今回登場した4つのプロジェクトはみな「継続する」ことに重点が置かれていました。そこには、吉川さんのこだわりが現れていたようです。

次回は、そんな吉川さんがこれまでどんな人生を歩んできたのかをたずねます。中学生でのサッカーを通した経験が大きなターニングポイントになったようです。

そこからどのようにして国際協力に至ったのでしょうか。 次回をお楽しみに。