つむぐ、Colorbath #02 世界とつながる原体験 -Web交流プログラム「DOTS」-

はじめに

こんにちは、ライターの十文字 樹(じゅうもんじ たつき)です。

「Colorbathっていったい何をしている団体なのか?」
「何のために活動しているのか?」

そんな、私自身の疑問から始まったインタビュー企画「つむぐ、Colorbath」。

第1回では「みえる世界をひろげよう -Colorbathの原点にせまる-」と題して、団体名の由来やプロジェクトに向き合う視点について書きました。

第2回の今回は、吉川さん・椎木さんのお二人にWeb交流プログラム「DOTS」について尋ねました。そこから、Colorbathの価値観に迫っていきたいと思います。

Web交流プログラム「DOTS」の原点 −吉川さんにきく−

前半は吉川さんにWeb交流プログラム「DOTS」が始まった経緯を尋ねます。

※2020年度より、Web交流プログラムは「DOTS」というプロジェクト名になりました。

Web交流プログラム「DOTS」

「DOTS」のはじまり

吉川さん

もともとベネッセで働いていたときに、日々学校現場をまわりながら仕事をしていました。

日本の教育の課題をたくさん聞いていた一方で、同時に日本の教育の素晴らしさも現場でリアルに感じていました。それを途上国の教育の問題とつなげたいと思っていました。

僕がColorbathの前に所属していた団体では、ネパールの孤児院を支援する活動をしていたのですが、そこでWebを使って日本と途上国の交流を実施する機会があり、その経験から可能性とおもしろさを感じました。

2010年代前半からDOTSの原型となる活動を実施し始めたそうですが、当時の日本の教育現場では英語教育が大きな関心事だったそうです。

初めてネパールとDOTSを実施したときの様子

しかし学校関係者からは、欧米などのネイティブと交流することが良しとされ、発展途上国とWebを使って交流することに意義を見出してもらえず、反対されることも少なくなかったそうです。

プロジェクトの原点

しかし、反対意見を多く聞くことはあっても、Webを使った途上国との交流には可能性を見出していたそうです。

吉川さん

私が14歳の時にブラジルに行ったのが初めての海外経験でした。その後は、オーストラリアに2週間のホームステイをし、大学生になってアメリカに一年留学しました。

これらの経験は、それまでかぶっていた自分自身の殻を破るきっかけになりました。海外とのつながりの結果、今の自分が形成されたと感じています。

知らなかった自分を知ったという体験が視野を広げることになるし、その過程で偏見は崩されていくと思います。

かつての吉川さんは人前に出るようなタイプではなく、全体の前で発表することも苦手だったそうです。

海外での生活を通して、人と出会い、様々な価値観を知ることのおもしろさを実感しはじめたと言います。

しかし、「海外に行けば様々な価値観を知ることができる」とはいえ、経済面でも安全面でもハードルがあります。

そんな時、Webを使った交流を通じて海外の国や人のことを知ることが、ハードルを越える助けになるのではないかと吉川さんは考えました。

新たな価値への気づき

このような意義を見出すことができても、実際の教育現場ではなかなか時間を割く余裕がありません。そんな中、2013年に吉川さんは貴重な経験をしたそうです。

吉川:

教育委員会からの要請で、中学校でDOTSを実施することになったことがあります。先生方とともに、良いプログラムを実施できれば嬉しいなと思っていました。

しかし、実際に学校に行ってみると先生方は多忙な授業スケジュールだったため、追加の仕事であるDOTSの準備や対応へ割く時間がない、そんな状況でした。

先生方とも話し合った結果、僕がプログラム内容や進行に責任をもつ形でDOTSを実施することになりました。

終わってみると、先生方にとっては知らない生徒たちの一面を知ることができたと言ってくださり、DOTSの価値に気づいてもらえました。

生徒だけじゃなくて、先生も新しい可能性に気づくことができる。そのときのWeb交流を通して僕が気づいたことでした。

2013年に実施した大阪市都島区とネパールのDOTS

DOTSを実施してみると、生徒だけでなく先生や主催者側にも様々な気づきがあります。

私自身、一度DOTSに参加したことがありますが、年齢に関係なく気軽に海外を体験することができ、刺激を受けられる場だと感じました。

私が体験したDOTSは、DOTSに興味がある人を集めての実施でした。それでは、学校現場でのDOTSはどのように行われているのでしょうか。

現在DOTSのメインのディレクターになっている椎木さんにききました。

DOTSの内容と意義 −椎木さんにきく−

Colorbath CCO・椎木睦美

椎木さん

DOTSは、小中学生向けに実施することが多いです。

英語で参加者同士が自己紹介した後は、それぞれが相手に対して抱いた興味や関心のあることを自由に発言し、聞く時間をとります。

大事なことは生徒の主体性です。

そのため、できる限り運営側の私たちは質問づくりなどに干渉しません。

すると、こどもたちは好きな人のことを聞いたり、どんな遊びをしているのか思いつくままに相手に聞くようになります。

自発的に相手と対話した経験が、英語学習に対する意欲が湧いたり、海外や世界にも興味を抱くきっかけとなります。

それが、様々な価値観へ触れるための一歩にもなると感じています。

授業の中で国際交流をするとなると、どうしても「事前に用意された質問」と「無難な解答」を準備することが大切になってしまう側面もあります。

しかし、そこをあえて「友達同士の会話」のように肩の力を抜いて話せる「場の雰囲気」をつくり、英語で話すことだけにとらわれない環境を提供することが、運営側の役割だと椎木さんは考えています。

実際にDOTSを経験した生徒の中には、英語に興味をもちはじめ、難しいと思われていた高校の英語科に進学した生徒の例もあるそうです。

椎木さんが考えるDOTSの意義

椎木さんはJICA青年海外協力隊の隊員としてマラウイの学校教育活動を行っていました。

現在は山口県の中学校とマラウイの学校をつなぐDOTSを実施しています。教育現場を知る椎木さんは、DOTSの価値はどこにあると考えるのでしょうか。

富田中学校(山口県周南市)でのDOTSの様子

椎木:

自分たちにとって未知な国とつながるDOTSは「非日常と出逢える場」であり、教室にいる生徒全員が「正解のわからない環境」を体感することになります。

すると、間違いを恐れず発言できる環境を生み出すことができ、そこが醍醐味だと思っています。DOTSは、「新しい自分を出す」経験を通して、なにかに一歩踏み出すきっかけを届けられると考えています。

そして、このきっかけは、学校の先生がパソコンを使い、インターネットがつながる環境があれば、いつでもどこでも提供できるようになる。それを伝えていきたいです。

そして、世界は遠い存在ではなく、身近になってきているということを体感してほしいですね。

学校の授業では、問題が与えられており、一つの正解が与えられている場合がほとんどです。しかし、DOTSには正解もなければ、解答するべき問題もありません。

このような環境によって、それまでとらわれていた枠組みから一歩踏み出す経験ができます。

椎木さんは、一歩踏み出すことの重要性を繰り返し強調していました。椎木さんの思いについては、次回以降も尋ねていきたいともいます。

DOTSの未来

一歩踏み出すきっかけを届けて、みえる世界をひろげたい。その一つのプロジェクトとしてDOTSがあることが分かりました。

最後に、今後はどのように展開していくのかを吉川さんに尋ねました。

吉川:

2020年2月に、山口県にある椎木さんの母校でネパールとマラウイの三か国でDOTSをする機会がありました。

日本側は200人が参加する大規模での実施でした。3ヶ国と繋がる経験は子どもたちも保護者さんも非常に感動していました。

Colorbathには経験があるからできることもあるけれど、ZOOMやSkypeを使えば今ではだれでもできます。そのためDOTSを実施できる先生を増やすことがプロジェクトの目的の一つになっています。

ColorbathがいなくてもDOTSはできるはずだと思います。

3ヶ国でDOTSを実施したときの様子

実際にDOTSは、文部科学省が実施する「EDU-Portニッポン」というプロジェクトにおいて、「海外へ輸出する日本の教育方法」のひとつとして採択されました。

「EDU-Portニッポン公認プロジェクトとして採択されました」

少しずつではあるものの着実に、DOTSは日本の教育に変化を与えています。そして多くの生徒、教員、そして保護者にも「きっかけ」を届けることができているはずです。

今回は、DOTSを通して、Colorbathの価値観についてきいていきました。 次回は、DOTS以外にはどんなプロジェクトを実施しているのか、椎木さんに尋ねていきたいと思います。