2022年1月19日、慶應義塾大学総合政策学部・太田深月さんとColorbathスタッフ・椎木睦美が対談をおこないました。
テーマは、「国際協力と主体性」。
ネパールとマラウイで、衛生環境の向上や雇用創出などのプロジェクトに取り組むColorbathですが、活動していく中では、「国際協力」というキーワードや、そのみられ方に違和感をいだくこともあります。
「どうすれば、日本にいる私たちと現地にいる人たちの強みや主体性を活かしていけるのだろう」という太田さんからの問いは、私たちも日々向き合い、取り組んできたものでした。
それぞれの専門性やこれまで歩んできた人生が交錯し、とても意味のある対談の時間になったと感じています。
今回の記事は、その対談を文字起こし、まとめたものです。
みなさんともぜひ、「問い」と「一歩踏みだす勇気」を共有したいなと思います。
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「できないことを受け入れる」難しさと可能性

ボランティアという関わりかたであっても、「自分は未熟な状態だけど、何かはできるはずだ」と思ってしまうことがありますよね。その心持ち自体は尊いものだけど、上から目線になってしまいがちというか。

私も最近気づいたのですが、「自分だけじゃできない」ということを受け止めるって、すごく大事ですよね。
努力すればするほど、自分ができなかったことを受け止めるのは辛いんだと思います。
でも、自分だけじゃできないけれど、人とだったら、人とだからこそできることがあるって、私も最近気づけるようになった。大事な転換期にいるなって思います。
努力すればするほど、自分ができなかったことを受け止めるのは辛いんだと思います。
でも、自分だけじゃできないけれど、人とだったら、人とだからこそできることがあるって、私も最近気づけるようになった。大事な転換期にいるなって思います。

海外に行くと、「できないことを受け入れる」という経験に直面しますよね。
みんな、これまでも色々な人の助けがあって生きてきたれど、普段の生活の中だとやっぱり気づきにくい。
そこをインパクト強く、こんなにも人に支えられて生きてるんだと気づけるという学びも、大きなものだと思います。
みんな、これまでも色々な人の助けがあって生きてきたれど、普段の生活の中だとやっぱり気づきにくい。
そこをインパクト強く、こんなにも人に支えられて生きてるんだと気づけるという学びも、大きなものだと思います。

(日本にいると)物質的に豊かがゆえに、いろんな恩恵に気づきづらいというのもありますよね。私が小学生だった時代より、今はさらに技術が発展して、できることが増えています。
でも、ネパールやマラウイでは、「自分ではできない、みんなと支え合わないと生きていけない」というのが当たり前。感謝やリスペクト、力を借りるということをフットワーク軽くできる。常に未来のことを考えているから、できなかったらすぐに次のトライをする。そのエネルギッシュさからは、たくさん学べると思います。
でも、ネパールやマラウイでは、「自分ではできない、みんなと支え合わないと生きていけない」というのが当たり前。感謝やリスペクト、力を借りるということをフットワーク軽くできる。常に未来のことを考えているから、できなかったらすぐに次のトライをする。そのエネルギッシュさからは、たくさん学べると思います。

「二項対立を溶かす」ためにわたしたちにできること

どうしても「支援する」「支援される」という二項対立で捉えてしまいがちな中、Colorbathは「Share Village」のクラファンをされていましたよね。実は私も、こういう世界観を作るという考え方が自分たちの研究にも役立つんじゃないかという話から、Colorbathを教えてもらったんです。
このコンセプトが生まれたときは、どんな話し合いがあったんでしょうか。
このコンセプトが生まれたときは、どんな話し合いがあったんでしょうか。


「クラウドファンディング」自体が、頑張っている人たちを応援する、という構造になっているところに、違和感を持っていました。
「みなさんができないことをやるから応援してね」ではなくて、「みなさんにしかできないこともあるから、一緒にやってほしい」というメッセージを発信したかったんです。
私たちColorbathスタッフも含めて、「村民」という同じ立場の人を集めることで、ディスカッションをしたり、行動を生み出したりしやすい場づくりをしたいなと思っていました。
「支援する」「支援される」もそうですし、「応援する」「応援される」の対立も溶かしたかったですね。
だってそもそも、人として生きる上では、二項対立なんてないじゃないですか。
「みなさんができないことをやるから応援してね」ではなくて、「みなさんにしかできないこともあるから、一緒にやってほしい」というメッセージを発信したかったんです。
私たちColorbathスタッフも含めて、「村民」という同じ立場の人を集めることで、ディスカッションをしたり、行動を生み出したりしやすい場づくりをしたいなと思っていました。
「支援する」「支援される」もそうですし、「応援する」「応援される」の対立も溶かしたかったですね。
だってそもそも、人として生きる上では、二項対立なんてないじゃないですか。

ないですね。

ないはずだったんですけど、わかりやすく理解したい・伝えたいがゆえに二項対立として提示するという文化が定着しているとしたらもったいないなと。
だから「溶かしていきたい」という想いが強かったですね。
だから「溶かしていきたい」という想いが強かったですね。

「関係性を溶かしていく」なんですね。
クラファンという枠組みの中では、溶かす対象が「応援する」「応援される」という関係性だったと思うんですが、ふだんの活動ではどんなセクターの方と関わるんでしょうか。Colorbathのように活動してる方、現地の方、専門家の方…。
クラファンという枠組みの中では、溶かす対象が「応援する」「応援される」という関係性だったと思うんですが、ふだんの活動ではどんなセクターの方と関わるんでしょうか。Colorbathのように活動してる方、現地の方、専門家の方…。

学生さん、学校の先生方、子どもをもつ保護者の方とか…いろんな人と関わっていますよ。いろいろな人を集めたいなと思っています。
それぞれ、いろんな経験、違う性格・特性を持っている人が集まり合うことが、二項対立が溶けることにつながるんじゃないかなと。
今回のクラファンも、コーヒーやネパール、農業、ビジネスに興味を持つ人だけを集めていたら、革新的なことは生まれないと思うんですよね。専門的なことを、専門的にやるということに終始してしまう。
太田さんが、国際協力現場で主体性を見出すパターンランゲージを研究するときも、私たちのような活動をやっている団体だけではなくて、海外に興味がない人とかに話を聴いてみるのも面白いかも。
Colorbathも研究分野ではないですが、日々、全然関係のないものを組み合わせることでプロジェクトをつくったり、アプローチしたりしています。
同じもの同士で掛け合わせても同じものしか生まれないので、AとBで全然違うものを掛け合わせて、新しいCを生み出す。これ、楽しくないですか。
それぞれ、いろんな経験、違う性格・特性を持っている人が集まり合うことが、二項対立が溶けることにつながるんじゃないかなと。
今回のクラファンも、コーヒーやネパール、農業、ビジネスに興味を持つ人だけを集めていたら、革新的なことは生まれないと思うんですよね。専門的なことを、専門的にやるということに終始してしまう。
太田さんが、国際協力現場で主体性を見出すパターンランゲージを研究するときも、私たちのような活動をやっている団体だけではなくて、海外に興味がない人とかに話を聴いてみるのも面白いかも。
Colorbathも研究分野ではないですが、日々、全然関係のないものを組み合わせることでプロジェクトをつくったり、アプローチしたりしています。
同じもの同士で掛け合わせても同じものしか生まれないので、AとBで全然違うものを掛け合わせて、新しいCを生み出す。これ、楽しくないですか。


楽しいです。
2000年ごろから提唱されてきた、現地の方の視点をとりいれる「参加型開発」というものがあるのですが、今の時代に通用するかと言われると、新しい方法が必要だなと思っています。現地の人だけではなくて、もっと色々なセクターの人を巻き込んでいくのは面白いなと思います。
2000年ごろから提唱されてきた、現地の方の視点をとりいれる「参加型開発」というものがあるのですが、今の時代に通用するかと言われると、新しい方法が必要だなと思っています。現地の人だけではなくて、もっと色々なセクターの人を巻き込んでいくのは面白いなと思います。

そうそう。
言葉って難しいですよね。ある定義づけをしてしまったら、その通りの枠でしか考えられなくなってしまう。でも、変化し続けるのが社会なので、一つの「型」がずっと定着するなんてあり得ないんです。
いま太田さんが言ったように、新たなアプローチや考え方を、日々アップデートしていかなくてはいけないと思います。そこに、研究者の方々もチャレンジしてほしいな。
もちろん、研究者の方々だけではできないので、たとえばNPOで働いていて、現地の人と家族のように仲のいい人とか、または海外に興味がない人、ドメスティックに展開している国内の会社など、全く違うものとコラボしていくことで、学術界もアップデートされていくのではないかなと思います。
言葉って難しいですよね。ある定義づけをしてしまったら、その通りの枠でしか考えられなくなってしまう。でも、変化し続けるのが社会なので、一つの「型」がずっと定着するなんてあり得ないんです。
いま太田さんが言ったように、新たなアプローチや考え方を、日々アップデートしていかなくてはいけないと思います。そこに、研究者の方々もチャレンジしてほしいな。
もちろん、研究者の方々だけではできないので、たとえばNPOで働いていて、現地の人と家族のように仲のいい人とか、または海外に興味がない人、ドメスティックに展開している国内の会社など、全く違うものとコラボしていくことで、学術界もアップデートされていくのではないかなと思います。

研究って、先行研究をしっかりみて、どれだけ1ミリを積み重ねられるかという世界でもあると思うんです。でも一方で、普段出会わない人たちにアプローチしていけるのも、一つの研究者のあり方だなと思います。
現場にも入って、研究もやって、自分でも活動してみて。そんなことができたらいいなと思いました。
現場にも入って、研究もやって、自分でも活動してみて。そんなことができたらいいなと思いました。

太田さんならできると思います。このまま、型にはまらずに行ってほしい。
研究者ってことを、忘れるぐらいでも大丈夫なんじゃないかな。
研究者ってことを、忘れるぐらいでも大丈夫なんじゃないかな。