
今年度で5年目を迎える、周南市立富田中学校とマラウイとのオンライン国際交流プログラム「DOTS」。毎年、担当の先生方が中心となって交流テーマを設定し、全校生徒(約600名)から参加者を募り、毎年約30〜40名の生徒が集まる放課後プログラムを行っています。
富田中学校で初めてマラウイとの交流を行ったのは、2020年度。はじめは放課後の生徒会活動としてスタートし、そこから徐々に形式を変えてゆきました。2年目は、より英語学習や海外のことに興味関心をもつ様々な生徒に体験してもらう機会としたいという先生の想いもあって、全校生徒から参加者を募る方法に変更。そして、3年目には、先生は教室に入らず、生徒主体で準備から交流までができるように設計。4年目には、毎年参加してくれる生徒も増え、先輩が後輩に対して交流のアドバイスをしながら、自分たちで交流の内容を考えて運営していくというスタイルに変化を遂げてきました。
昨年度のテーマは「つなぐ×広がる 〜知恵を繋いで、より深く相手と関わり視野を広げる〜」。参加した生徒さんたちは事前に作戦会議で交流内容を考え、当日は臨機応変に交流が円滑にすすむようにサポートしあいながら行っていました。
▼昨年度の様子はこちらから
交流を通してたくさん学びを深めるには
5年目となった今回のテーマは「つなぐ×学ぶ 〜交流を通してたくさん学ぼう〜」。繋がり、視野を広げるという昨年度から、さらにレベルアップして、より学びを深めるために、どんな取り組みができるかを生徒たちを中心としながら準備します。
今回のテーマ設定には、生徒主体で活動を創り上げてゆくプロセスを経ることで、自己調整能力を高めるとともに、「異なる国の人同士の交流だからこそ学べること」を深めてほしいという、担当の京條先生と水島先生の想いがつまっています。
実際にこのテーマをもとに全校生徒に呼びかけたところ、今年の応募は49名と過去最多の人数が集まりました。先生のお話によると、入学した当初の1年生から、「富中はマラウイとの交流をやっていると聞いています。いつから始まるんですか?」と質問をされたとのこと。これまで4年間少しずつ形式を変えながらも継続してきたマラウイとの交流が、学校の文化にもなりつつあるんだな、ということもお話をきいて私は感じました。
49名という規模の中で、どうしたら「学びが深まる時間」にしていくことができるか。先生とも話し合いを重ね、今年は生徒を2チームに分け、マラウイ側はセントポールズ小学校とカプタ小学校の2校に参加してもらい、各学校と各チームが交流を深めていく形式をとることにしました。交流当日は2教室に分かれ、それぞれがマラウイ側の各学校とやりとりをしていきます。

今回はマラウイ側にも「生徒主体な交流であること」を伝えていたため、マラウイの先生も見守るスタイル。どうしても通訳が難しいときだけ、サポートに入るという形式。富中の先生も基本は別室で見守り、Colorbathスタッフもオンライン上にはいるものの通訳サポートは一切しません。
そんな中でも、生徒さん同士は互いに工夫しあいながらコミュニケーションをとりあい、まるで、「交流」というよりも、「一緒にオンライン上で遊ぶ」こととして楽しんでいる雰囲気でやりとりをしていく姿が印象的でした。
学びを深める手段は「言葉だけ」ではない?!
「学びを深める」ときくと、対話や質問のやりとりを通して深堀りしていくというイメージが私にはありました。もちろん、場合によってはそういう手段をとることも必要だとも思いますが…今回の富中生のやりとりを見ながら、私が感じたことは、「学びは後から実感していく」ということです。
今回の交流で、富中生の各チームはそれぞれに役割を自然と決めて動き、マラウイとのやりとりをしていました。
PCの前でチームの代表として盛り上げながらマラウイに伝える人、タイムマネジメントをする人、黒板をつかって流れを整理する人、伝わってないかもな〜というときにさっとホワイトボードやタブレットを渡してサポートする人、教室の全体をみながら指示を出したり、発言したそうな子の後押しをする人。
2チームに分かれたといっても、それぞれのチームは約20名。限られた時間の中で、全員が平等に話せるわけではありません。その中でも、みんなが主体的に動きながら交流を楽しむことができていたのは…きっと、チーム内で事前に「こういう時間にしたいし、していこう!」という合意をもって、取り組んでいたからなんだろうな〜と感じます。日本人同士の準備時間の中で、「これをしてみたい!」とか、「こういうことしたら盛り上がるんじゃない?」というアイデアをそれぞれが出し合い、みんなで決めて、当日を迎えている。 だから、生徒さんたちにとっては、「発言する」ということだけが、交流を楽しんだり、学びを深める手段ではないんだということも学ばさせてもらいました。
当初予定していた交流回数は4回でしたが、学校やマラウイ側の予定変更などもあり、今年度交流できた回数は2回。それぞれの交流で各チームはこんなことをしていました。
・代表生徒の愉快な自己紹介
・歌を歌ってほしいとのリクエストから日本は校歌を、マラウイは国歌を元気に披露
・「一緒に遊ぼう!」と富中生が声をかけ、しりとり大会のスタート。
→ 日本の生徒が知らない英単語はマラウイ側が何度もゆっくりスペルを伝え、(とはいえ、アルファベットの発音も現地語訛りもあるため聞き取りづらい…)教えながらホワイトボードに書いてみる。スペルがきちんと伝わって英単語が完成したときは拍手喝采の大盛りあがりで踊る。
・マラウイ側がまさかの世界的ヒットソング「APT」を熱唱し、驚きの富中生。
→ マラウイでもYoutubeやNetflixなど、スマホが主流であることを知る。

もちろん、富中生が用意してくれていたコンテンツが、思うように実行できないケースも。(笑)
しりとりで盛り上がっていたときに、マラウイの生徒が「他のゲームやりたいから、これしよう!」と相手側から遊びの提案をしてきたり…、次のコンテンツの準備に日本側があたふたしていると、マラウイ側から「歌をうたってよ!」とリクエストもあったり。笑
富中生が「交流を通して学びを深める」ということに対して、そのことだけをメインに考えるのではなく、「どうやったら楽しい時間になるか。マラウイの生徒たちに楽しんでもらえるか」という視点で準備してくれたことが、マラウイの生徒のより自然な姿を引き出すきっかけとなっていました。
毎年同じ学校同士でDOTSを行ったとしても、環境や生徒、交流の形式を変えていけば、一つとして同じ交流は存在しません。すべてのDOTSがその瞬間にしかないオリジナリティあふれるものになり、そこでの学びは、きっとDOTSを終えた後の日常生活に戻ったときや、授業中のふとした対話から、じわじわと実感として感じとってゆくものもあると思っています。
マラウイやネパールで協力してくれている学校は変わりませんが、彼らからしても、日本側の相手が異なれば、形式が違えば…毎回見せている表情や学び、楽しさや興味関心がすくすくと進化しているなと感じます。
リアルタイムにつながり、その瞬間にしか味わえない時間だからこそ、準備したことを柔軟に手放しながらもただ楽しむ。そんな大切さを富中の皆さんに教えてもらう機会となりました*
(Colorbathスタッフ:椎木)